研究概要 |
7年度はShh(ソニックヘッジホッグ)の歯胚での発現やHGF(肝細胞増殖因子)との関係の解明を目的に実験を進め、モルフォゲンの可能性を持つ因子の検索、さらにホメオボックス遺伝子の発現誘導の有無等を確認することにより、歯胚分化誘導因子の分析を試みた。 前回、歯胚の重複肢誘導活性の発生中期と出生直後の2回ピークの存在を報告したが、今回の分析は最初のピークである14日胚を中心に行った。HGFとその受容体であるc-metの遺伝子発現を検討すると、HGFは歯胚の間葉細胞に発現し、c-metは逆に上皮に発現していることが確認された。このことと歯胚の間葉細胞に重複肢誘導活性が高かったことを考えると、HGFがモルフォゲンである可能性が示唆されたため、ニワトリ胚の翼芽でのHGFの発現の検討したところ、HGFは主として翼芽のZPAとは逆の位置である前部に発現していた。これはHGFはモルフォゲンとはなり得ないことを端的に表している。また、Shh,FGFs,FGFR(リセプター)1〜4等の遺伝子発現を検討したところ、歯胚には若干のShh,FGF-4が、また、FGFR-1は14〜16日歯胚のエナメル上皮に発現しており、歯胚間歯にはわずかに発現が見られ、FGFR-2はその逆に歯胚間葉に発現し、エナメル上皮の発現はわずかであった。FGFR-3の発現は何れのステージにも見られなかった。逆にFGFR-4は上皮、間葉ともに発現していた。これらのうち、Shhは既にモルフォゲンとしてみとめられているもののそのほかはモルフォゲンの可能性は低かった。現在の時点では、歯胚の形成には複数の成長因子が関与しており、それらが重複肢形成に関与している可能性は認められるが、決定的なモルフォゲンの同定には至っていない。更に、第2のピークに何が関与しているのか、7年以後の課題として極めて重要なものと考えている。
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