研究概要 |
Mutans streptococciのグルカン合成酵素(glucosyltransferase,GTF)はショ糖からフラクトースを遊離すると共にグルコースを重合して不溶性粘着性グルカンを合成する。このような不溶性粘着性を示すグルカン合成は,α-1,6結合を主鎖とする水溶性グルカンを合成する酵素(GTF-S)とα-1,3結合を主鎖とする不溶性グルカンを合成する酵素(GTF-I)とのde novo合成に起因することが知られている。しかし,精製GTF-I酵素がα-1,6グルカンをプライマーとしてショ糖から生成する不溶性グルカンには付着性が無い。このことは,de novo合成される不溶性グルカンにはα-1,6鎖とα-1,3鎖の複雑なネットワーク形成によって付着性が付与されると推察される。本研究では,GTF-IとGTF-S遺伝子をクローニングし,酵素蛋白の大量発現系を確立し,酵素分子構造と機能並びに不溶性粘着性グルカン合成機能を明らかにすることを目指している。 本年度の研究によって、以下の知見を得た。 (1)Streptococcus cricetus HS-6 GTF-S遺伝子の塩基配列:昨年度に作製したGTF-S遺伝子を含むファージクローン(λAM-1)から,全GTF-S遺伝子を持つプラスミドpAM1を作製した。次に種々のディリーションミュータントを調製して,全塩基配列の決定を進めている。現在4kbpを分析した。 (2)GTF-S遺伝子のクラスター構造:Streptococcus cricetus HS-6 GTF-S遺伝子の塩基配列を部分的に決定したところ,pAM1(8.4kb)の5′上流領域に,S.downeiのgtfSと約70%,下流領域にS.sobrinusのqtfTと約70%の相同性が認められたことから,挿入DNAには2種類のGTF遺伝子が並んで存在することがわかった。
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