平成6年度における本補助金による研究活動によって次のことが明らかとなった。 成熟マウス(2匹)の切歯(下顎)を麻酔下で切断し、歯髄を露出し、歯髄内にWGA-HRPを注入した。48時間後に灌流固定し、HRP注入側の三叉神経節と脳幹を採取した。同試料を薄切し、テトラ・メチルベンチジンによる発色反応を行ってHRPを取り込んだ三叉神経節及び脳幹のニューロンを顕微鏡で同定した。また2匹のマウスから2例の三叉神経節ニューロンの大きさを計測した。 その結果マウスの三叉神経節ニューロンの大きさは長径20〜25μに峰を持つやや小型のものが多い。その中で少数ながら大型(20〜35μ)のものがHRPを取り込んでいることが分かった。同様に取り出し固定した脳幹部(中脳)にHRPを取り込んだ細胞が見られなかったことから、注入時にHRPは歯周組織に漏れなかったものと思われ、三叉神経節内のHRPを取り込んだニューロンは全て下顎切歯歯髄に分布しているものと考えられた。 従来大型のニューロンは有髄神経を出し、小型のニューロンは無髄神経を出すということが一般的に言われてきた。しかし、マウスの下顎切歯歯髄には無髄神経しか存在しないという以前の著者らの研究と、今回の下顎切歯歯髄には大型の三叉神経節ニューロンが分布しているという結果から、従来の説は再検討を迫られることになった。つまり、大型のニューロンでも無髄神経を出す可能性があるということである。まだ2例のみで充分満足のいく結果ではないが、引き続き例数を増やし、検討を続けたい。併せて、平成7年度の課題である歯髄神経の細胞組織化学的な特徴の検索と、それらのカプサイシン投与による影響を調べる予定である。
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