1.ヒト顎骨の脈管神経管内における歯原性上皮の分布に関する組織学的検討: ヒト顎骨では、脈管神経管内の神経線維束に沿って歯原性上皮が深部にまで分布している状況を詳細に観察し、歯原性腫瘍や嚢胞の組織由来をこれらの上皮に求めた。 2.腺性歯原性嚢胞の病態と組織由来に関する検討: 腺性歯原性嚢胞の病理像の詳細を検索した。次いで、歯牙腫、歯原性角化嚢胞、瀘胞性歯嚢胞の上皮成分における腺管状構造の出現状況を検討し、腺性歯原性嚢胞の成り立ちについて考察を加えた。 3.腺様歯原性腫瘍の組織像の多様性に関する検討: 多数例の腺様歯原性腫瘍の組織所見の詳細を検索し、本腫瘍の上皮-間葉相互作用に基づく組織所見の多様性を明らかにするとともに、奇形腫的性格がつよいことを示した。 4.歯原性腫瘍の診断学に関する病理学的検討: WHOの歯原性腫瘍の改定分類における妥当性を欠く点について、“象牙質腫"の考え方を中心に論じた。また、歯原性腫瘍や嚢胞に関する最新の知見と筆者の考え方を教科書的ならびに総説的にに論述した。 5.歯原性腫瘍のモデルとしての歯牙腫の有用性に関する病理学的検討: 多数例の歯牙腫を用い、軟組織成分に注目して組織所見の詳細を検索した。その結果、種々の歯原性上皮性腫瘍、非上皮性腫瘍、混合腫瘍の発生初期像を示唆する所見が観察された。したがって、歯牙腫は歯原性腫瘍の組織由来を知るための有用なモデルであるとの結論に達した。 6.歯原性組織と神経外胚葉系細胞との関連に関する病理学的検討: イヌ(胎児、成獣)を用い、従来の検索の追証を行った。
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