pH依存性蛍光粒子について、組織内での蛍光物質とpH変化に先立ち、形成期、および成熟期エナメル質、象牙質と蛍光物質の関係を以下の項目に分けて調査を行い、新たな知見が得られた。i)合成アパタイトとブタ形成期、成熟期エナメル質のアパタイト結晶を取り出して、蛍光粒子の吸着を比較したところ結晶の表面積に依存して吸着量の変化が観察された。ii)エナメルタンパク、および象牙質のコラーゲンに対する蛍光物質の吸着量を測定したところ、タンパクの重量当たり10%弱の蛍光粒子の吸着が認められた。iii)同一蛍光粒子濃度条件下においては、pH6.5〜9.7の範囲内において、一定の励起波長に対してpHの変化と吸光度の間で直線的な関係を認めた。IV)同一蛍光粒子濃度条件下においては蛍光粒子1:Ca濃度500まで急激に吸光度は変化するが、それ以上のCa濃度になると吸光度はプラトーに達し以後変化しないことが分かった。このようなin vitroでの新たな知見は、従来蛍光粒子が特定の物質の同定や時刻描記の目的のみに使用されていたのに対し、生体内での物理化学的溶液相の変化をも指し示すことが証明されたものであり、今後の同分野での蛍光粒子の応用に新たな進展をもたらすことが期待される。さらに実際の歯胚を用いて、形成期および成熟期のエナメル質の石灰化過程のpHについて検索したところ、基質形成期ではほぼ中性のpH7.3を示し、成熟期ではまずpH6.0〜6.2の酸性領域がはじめに出現しその後中性領域と酸性領域が交互に出現しつつエナメル質の石灰化が進行することが理解された。
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