1.プロテアーゼ消化によるハイドロキシアパタイト結合部位の検索 骨や歯の基質中に存在するハイドロキシアパタイト結合タンパク質を、合成アパタイト結晶に吸着させてプロテアーゼ消化をおこなった。材料として用いたのは、象牙質に特有のリン・タンパク質であるフォスフォフォリンと骨の酸性糖タンパク質であるオステオネクチンである。フォスフォフォリンは多量のリン酸基によって修飾されているために、プロテアーゼに対して抵抗性を持つ。しかし、アパタイト結晶に吸着した状態では、プロテアーゼによって消化されたので、結晶表面上ではポリペプチド鎖が伸展した構造をとり、プロテアーゼ感受性部位が露出すると考えられる。一方、オステオネクチンをアパタイト結晶に吸着させてプロテアーゼ消化をおこなうと、分解されて、ドメイン1と2を含むフラグメントが結晶に吸着したままの画分に回収された。このことはアパタイト結晶結合部位がこれらのドメインの内部にあることを示している。 2.ハイドロキシアパタイトに親和性を持つ合成ペプチドの作成 上記のオステオネクチンのドメイン1にはGluに富む配列が存在する。また、フォスフォフォリンその他のアパタイト結合タンパク質にはAspやGluの連続配列が存在して、アパタイト結晶への結合部位であると想像されている。そこで、これらの配列のモデルとして、GluまたはAsp6残基よりなるペプチドを合成して、そのアパタイト結晶への親和性を測定した。これらのペプチドは10^6M^<-1>という高い親和性で結晶に結合した。したがって、これらの酸性アミノ酸連続配列がアパタイト結晶結合部を構成すると考えられる。
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