本研究では聴覚からのフィードバック入力が音声の発声にどのように影響するかについて、ラットを実験動物として実験的に明らかにすることであった。ラットは可聴音の他に超音波を発声するが、その発声は育仔行動・攻撃行動・性行動などの特異的な行動と結び付いて発声されるもので、可聴音の発声と異なり、可聴音成分を含まない独特のおであるので、聴性フィードバックの影響を調べるモデルとして適当と思われた。 各年度の研究期間において、ラットの発声する超音波の記録解析から行い、電気刺激による超音波発声および超音波発声の時の呼吸運動の記録解析を行い、自然状態での超音波発声の記録と発声頻度を増加させる行動学的訓練を行い、最終的にラットが無麻酔下で発声するときにその発声音を時間を遅らせて聞かせたときの発声音の変化を記録しようとした。これらのうち超音波発声の記録・解析、超音波発声時の特異的な呼吸運動の記録・解析は行うことができた。自然発声頻度を行動学的手法によって高める訓練では、多くの試行を試み、データを解析したが、訓練前と比較して発声頻度の有意な増加を示すことは困難であった。従ってラットに超音波を自然状態で高頻度で発声させるには餌のポジティブレウォードによる行動学的訓練のみによってではなく、上記の特異的行動を導入し、例えば、妊娠後、育仔行動を行っている母個体を単独で実験箱に入れて使用するなどを行ってみることが必要であろうと思われた。
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