本研究の目的は、形態や機能の点で異なる三叉神経中脳路核ニューロンのサブ・グループを用いて、イオンチャンネルを解析し、イオンチャンネルの構成様式と細胞体の形態あるいは支配する受容器の違いとの関連を明らかにすることである。 研究にあってはin vitro標本を用いることが必要で、その開発を行った。95年度開発したスライス標本は三叉神経中脳路核ニューロンの細胞体と軸索突起の一部を標本中に含むが、機能的作動様式を検討するためには三叉神経中脳路核ニューロンを含んだ神経回路網を無傷のまま待つin vitro標本が必要となった。そこで96年度は三叉神経中脳路核ニューロンを神経回路網中に含む脳標本の開発を行った。新生ラットを用い、エーテル麻酔下で上丘吻側端から第7頚髄までの脳幹-脊髄標本を摘出し酸素-二酸化炭素混合ガスで飽和した人工脳脊髄液を潅流した記録槽中に設置した。ガス又吸引電極で、三叉神経運動根(Vm)、舌下神経(XII)、第4ないし5頚髄前根(C)から神経活動を記録するとともに、三叉神経感覚根(Vs)に電気刺激を加えた。 本標本では、Vm、XII、Cから吸息活動に一致したリズミカルな自発性神経活動が観察されるとともに、Vsの刺激によってVm、XIIからそれぞれ神経脊射が観察された。潅流液中にN-methyl-D-aspartateを投与すると、XIIから、C、Vm、XIIで観察された自発性吸息活動とは明らかに異なるリズミカルな神経活動が誘発された。すなわち、三叉神経中脳路核ニューロンを含み、反射弓、さらにリズム運動を発現する神経回路を持つin vitro標本の開発に構成した。
|