研究概要 |
本研究は、口腔に加えられた味覚刺激による顎舌運動(味覚運動反応)における橋味覚野の役割を評価すべく計画された。閉成6年度は、味覚運動反応を総合的に把握すべく、行動的な側面から解析を進めた。えられた成果を「方法的な面」と「内容的な面」に分けて述べる。 方法的な面では,従来の研究が顎舌運動に関与する特定の筋活動を記録することが多く、果たして誘起される反応の全体を観察しているのか否かに問題が残った。そこで、本研究では、味溶液の摂取行動を全体的に捉えるための改良を試みた。すなわち、味溶液の入った給水ビンに圧力トランスデューサを取り付けて、摂取に伴うビン内圧の変化を観察できるようにした。これによって、個々の摂取周期はもちろんのこと、摂取速度や摂取圧の概略もわかり、同時におこなっているビデオ記録と相俟って、顎舌運動の総合的な解析が可能となった。 内容的には、橋味覚野を両側性に電気凝固した動物(破壊群)と無傷群の味溶液摂取行動を比較して、同野の味覚運動反応における役割を吟味した。現在までの解析では、いわゆる四基本味の摂取行動について、「破壊」と「無傷」の両群間において際立った差違がみられていない。この結果は、味覚運動反応は橋味覚野を経由する神経回路より、むしろ延髄孤束核レベルでの味覚情報に依存することを示唆する。しかし、組織学的検索の結果によると、橋味覚野の破壊は必ずしも均一ではなく、今後個々の動物における破壊部位やその程度と味覚運動反応との関係をより詳細に検討して、最終的な結論を下したい。
|