研究概要 |
インスリン様増殖因子(IGF)遺伝子発現の際に、特にIGF-II遺伝子では種特異的・時期特異的にエクソン使い分けによるプロモーター変動が起きている。IGF-II遺伝子での4個のプロモーター(IIP1,IIP2,IIP3,IIP4)およびIGF-I遺伝子での2個のプロモーター(IP-1,IP-2)が同時発現する骨系細胞を使ってプロモーター変動に対する定量的解析法をRNase Protection Assay(RPA)を用いて確立すること(本年度)とその方法を骨肉腫・軟骨肉腫に適用して臨床検査的応用の可能性を検討すること(次年度)とが本申請研究の目的であり、次のような本年度の結果を得て学会発表(第36回基礎歯科医学会学術大会・総会、第36回日本生化学会中国四国部会例会)と雑誌への投稿を行った。 (1)IGF-II遺伝子のIIP1プロモーターが欠損するマウス骨芽細胞から4個のうちの3個の対応したプローブを作る最初の計画を変更してヒト軟骨肉腫由来HCS-2/8細胞から予定した4個のプロモーター領域のRT-PCR産物すべてとIGF-I遺伝子での2個のプロモーター領域のRT-PCR産物を得ることができた。 (2)それらのRT-PCR産物のうちIIP2に対応したしたもの以外はすべてそのシークエンス解析から目的のものが得られていることを確認した。IIP2に対しては、再度,RT-PCR産物から検討しなおしている現状である。 (3)IGF-II遺伝子およびIGF-I遺伝子に対するIIP2以外のプロモーターに対するプローブを作製し、現在、それらを用いてRPA法による定量的解析法を検討中である。 さらに、上記のIGF-II遺伝子での4個のプロモーター発現と関連したその遺伝子のインプリンテイングの問題において、ヒト軟骨肉腫由来のHCS-2/8細胞で発現している各種プロモーターに対するアレル(alleles)の組み合わせは正常細胞に見られるような組み合わせ(Vu and Hoffman:Nature 371,714-717,1994)とは少し異なったパターンが観測された。この問題は次年度の臨床検査的応用の可能性の検討においての主要なテーマの一つであるので、現在、各種の細胞株あるいは組織での比較実験を準備中である。
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