研究概要 |
ヒトインスリン様増殖因子(IGFs)遺伝子の発現と使用プロモーターの変動に対するRNase保護アッセイ(RPA)法による定量解析法の開発が、マウス骨芽細胞株を用いる当初計画を一部変更して、ヒト軟骨肉腫由来軟骨様細胞株HCS-2/8で試みられた。当申請研究の主目的であるRPA用のプローブ作製は、IGF-2の4種のプロモーター(2P-1, 2P-2, 2P-3, 2P-4)のうち2P-2以外に対して、IGF-1の2種のプロモーターに対して、それぞれ成功した。現在、それらのプローブを用いたRPA法の適用範囲、限界を骨芽細胞、軟骨細胞等で調べている。また、転写産物の非常に少量であった2P-2のPCR産物を集積しており、クローニングに必要な量になり次第そのプローブ作製を行う予定である。今回の開発研究に関連した基礎的研究で以下の新事実を究明、発見し、現在それらの論文を作成中である。 1. IGF-2の4種のプロモーターの同時発現をHCS-2/8、ヒト正常軟骨細胞において初めて見いだした。 2. HCS-2/8のIGF-2の2P-4からの転写産物の複写開始点のすぐ上流の4塩基の欠損を見いだした。この欠損は染色体レベルでは起こっていなく、おそらくその肉腫由来細胞での特異的な選択的スプライシングに起因した欠損であるものと思われる。 3. HCS-2/8とヒト正常軟骨細胞の比較において、ともにインプリンティング遺伝子であるIGF-2とH19(癌抑制遺伝子)のそれぞれの発現量の間にパラレルな相関関係が存在していた。 4. HCS-2/8のIGF-2の制限酵素断片長多型の研究は、インプリティング型母親アレルはなく、父親由来のアレルだけの存在を示していた。このことが、軟骨肉腫形成に関連していると思われる。
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