研究概要 |
平成7年度は以下の実験よりカルシウムイオンとcyclic AMPの水分泌に果たす役割を解明し,昨年度成果と合わせ報告集としてまとめた。 1)蛍光色素分泌及び水分泌に対し,カルシウムイオノフォアA23187は緩やかに促進効果を示した。還流液中のカルシウムイオンを除去すると後期の持続的な水分泌のみが,抑制された。cyclic AMP単独投与では効果を示さなかったが,しかしcyclic AMPとCChの併用は水分泌を抑制した。顎下腺での上記結果とは異なり,耳下腺ではcyclic AMPはCChによるカルセイン分泌を増強した。 2)副交感神経作動薬による蛍光色素分泌と水分泌に対するイオンチャネル阻害剤の影響は以下の様であった。Kチャネル阻害剤Baは水分泌とカルセイン分泌を抑制した。Clチャネル阻害剤 DPCは,初期水分泌とカルセイン分泌には影響しないで,後期の持続的な水分泌を抑制した。 3)上記実験時の細胞形態の変化をコンフォーカル・レーザー顕微鏡を用いて調べた。CCh刺激直後には,腺腔側に面した細胞膜が落ち込み腺腔が拡大し,カルセインは細胞内細管内に分泌された。刺激後に引き続いて腺房細胞内に液胞が形成された。細胞外のカルシウムイオンの除去や,Kチャネル阻害剤Ba処理により,液胞形成は抑制された。Clチャネル阻害剤DPCでは液胞形成は抑制されなかったが,液胞拡大が阻害された。 4)自律神経刺激剤による燐酸化蛋白質を抗チロシン燐酸化抗体を用いて耳下腺で調べたところ,現在の所大きな差違は認められなかった。
|