研究概要 |
神経系が単純な軟体動物アメフラシを用い、摂食行動が発現する神経機構の解明をめざしている。これまで動物の閉口筋は伝達物質としてグルタメートを用いる興奮性運動ニューロン(JC)と、アセチルコリンを用いる抑制性運動ニューロン(MA)により二重支配をうけていることが明らかになった。一方、閉歯舌筋はアセチルコリンを放出する興奮性運動ニューロン(B15,B16)により支配されている。本研究は、これら摂食筋におけるアセチルコリン、グルタメート応答に寄与する受容体、チャンネルの性質、およびそれらの調節機構を明らかにすることを目的とした。現在まで筋繊維の単離法を確立し、すでにアセチルコリンによる過分極応答にはCIチャンネル結合型ACh受容体が関与していることを明らかにした。 本年度はまず二連刺激用ピペットを用い、アセチルコリンとグルタメートを同一の閉口筋細胞に与えた。アセチルコリンでは過分極応答がグルタメートでは脱分極応答が誘発され、同一の閉口筋細胞にアセチルコリン、グルタメート二種類の受容体が共存することが明らかになった。また、閉歯舌筋の単一細胞を作成し、ホールセルクランプ法により応答発現のイオン機構を調べた。その結果、閉歯舌筋に存在するACh受容体は一般によく知られるNaチャンネル結合型(一部Kイオンも通す)であることが明らかになった。一方、CIチャンネル結合型受容体の修飾機構を調べるため、アメフラシで見い出されている3種類のペプチド(FMRF,Myomodulin,SCPs)についてMAにより誘発されるIJPsへの影響を調べたところいずれもその大きさを減少させることがわかった。またホールセルクランプ法を用いてFMRFの効果を調べたところ、CI電流そのものを減少させ、何らかの機構によりACh受容体を修飾していることが明らかになった。
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