コンジェニック・マウス味細胞を用いた味覚刺激変換機構の研究

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06671862
• 研究機関: 長崎大学
• 研究代表者: 宮本 武典 長崎大学, 歯学部, 助手 (10167679)
• キーワード: マウス味細胞 / パッチ・クランプ / 非単離味細胞 / 系統差 / 塩応答 / アミロライド / 甘味応答 / D-フェニルアラニン

研究概要

前年度において確立した剥離上皮標本の非単離味細胞を用いて、引き続きマウスの塩応答発生機構の系統差による比較を行った。その結果以下のことがわかった。1.アミロライド感受性に関しては低感受系のBALB/cマウスと等価のコンジェニック・マウスの味細胞においても、約50%の確率でアミロライド感受性が観察された。このことは、前年度の結果から示唆された両系統のアミロライド低感受性がアミロライド感受性味細胞の低出現率に起因するとの仮説を支持する。2.塩応答発生機構には、アミロライド感受性および非感受性のコンポーネントが含まれている。3.塩応答は、(a)両コンポーネントが単一の味細胞で同時に発現する場合(タイプ1)、(b)アミロライド感受性コンポーネントだけが発現する場合(タイプ2)および(c)アミロライド非感受性コンポーネントだけを発現する場合(タイプ3)の3タイプに分けられた。4.タイプ1と2は、C57BL/6とBALB/cの両系統で観察されたが、タイプ3は後者のみに観察された。5.アミロライド非感受性コンポーネントは更に、カリウム・チャネルの遮断によるものとカチオン・チャネルの開口によるものと少なくとも2つのコンポーネントに分けられる。
カリウム・チャネルの遮断による脱分極は、甘味やうま味応答の発生機構として提唱されてきた。アミロライド低感受性であるBALB/cマウスは、高感受性のC57BL/6と比較して、より高い食塩に対する忌避濃度閾値を示すことが行動実験で知られている。それゆえに、この味刺激変換経路はアミロライド感受性の経路とは異なる味覚情報の伝搬経路を関与しているのかも知れない。甘味応答に関しては、D-フェニールアラニン感受性の味細胞が非常に少なかった。このような味細胞では、5′-GMPやサッカリンによる増強作用も観察されなかった。

研究成果

• [文献書誌] 宮本 武典 他: "マウス非単離味細胞からの味応答のホールセル記録." 日本味と匂学会誌. 2. 351-354 (1995)
• [文献書誌] 岡田 幸雄 他: "カエル味細胞膜特性に対するバソプレッシン(AVP)の効果." 日本味と匂学会誌. 2. 355-357 (1995)
• [文献書誌] Miyamoto,T.,et.al.: "Whole-cell recording from non-dissociated taste cells in mouse taste bud." J. Neurosci. Meth.(in press). (1996)
• [文献書誌] Miyamoto,T.,et.al.: "Properties of Na^+ -dependent K^+ conductance in the apical membrane of frog taste cells." Brain Res.(in press). (1996)
• [文献書誌] Miyamoto,T.,et.al.: "Amino acid-induced responses in catfish taste cells." J. Exp. Biol.(in press). (1996)
• [文献書誌] Spielman,A.I.,et al.: "Experimental Cell Biology of Taste and Olfaction" CRC Press, 437 (1995)