研究概要 |
本年度は、成長に伴う軟口蓋味蕾の発達と分布の変化を組織学的に調べた。その結果、5匹のラット舌に分布する味蕾の数は、1)出生直後は94±12.8個しか無く、その後増加を続け、3週齢で196.4±18.3個に達する、2)味孔を確認できる味蕾の数は出生直後は15.3%程度と極めて少なく、2週齢で92.4%に達することが分かった。これに対し、ラット軟口蓋に分布する味蕾は、3)既に出生直後に成熟した動物と同数の183.4±10.9個分布し、4)味孔を確認できる味蕾は出生直後に80%程度存在し、その後2週齢でほぼ94.7%にまで増加することが分かった。また、5)有郭乳頭の味蕾数は出生直後には37.8±23.8個、4週齢で419.6個、さらに6)葉状乳頭では出生直後には味蕾が観察されず、4週齢で303.6±72.2個観察した。また、ラットの他、成熟したマウス(C57BL,C3H)、ハムスター、モルモット、スンクス、および哺乳期と成熟したマ-モセットについても、舌および軟口蓋の味蕾の形態と分布を調べた。その結果、7)何れの動物も軟口蓋に多数の味蕾が分布しているが、特に、8)マ-モセットでは、9歳で228個観察したのに対し、授乳期の2ヶ月齢では635個もの味蕾が観察された。これらの結果から、哺乳類の口腔内に分布する味蕾の中で、軟口蓋に分布する味蕾が発育初期に重要な機能を果たしている可能性が極めて高い事が示唆された。これらの結果に基づき、次年度も引き続き組織学的研究を進めると共に、各週齢のラット大錘体神経からの味覚応答解析を試み、発育に伴う軟口蓋味蕾の機能的な変化を調べる予定である。
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