1.EGFレセプター(EGFR)に及ぼすEGFの効果 ヒト顎下腺由来細胞株(HSG:human salivary gland adnocarcinoma cell line)のクローンであるHSG-AZA3細胞において、細胞増殖因子であるEGFは濃度依存的に[^3H]-thymidineの取り込みを増加させた。EGF作用の発現にEGFRの関与が推察されたので、EGFRの存在をウェスタンブロッティング法により調べた結果、約170kDaの位置にEGFRのバンドを認めた。このバンドはEGF処理後に増強した。またEGF処理細胞から抽出したRNAについてRT-PCR法により検索したところ、予想された142bpのcDNA増幅バンドがEGF処理12時間後に最大となり、その後、暫時減少した。 2.EGFR内在性チロシンキナーゼならびにMAPキナーゼ(MAPK)の検索 EGFRのチロシンリン酸化(自己リン酸化)を調べるためにウェスタンブロッティング分析を行ったところ、EGF処理5分後に170kDaバンドのチロシンリン酸化を認めた。また、EGF処理はEGFR内在性チロシンキナーゼ活性を上昇させた。最近、MAPKを中心とするリン酸化カスケードが注目されている。そこでMAPKについてウェスタンブロッティング分析したところ、EGF処理後にリン酸化されたMAPK(活性型)のバンドが検出された。また、MAPKに特異的な基質への^<32>Pの取り込み実験において、EGF投与はMAPK活性を上昇させた。 3.細胞性ガン遺伝子c-fosならびにc-mycの検索 EGFはEGFRに結合すると細胞内に情報が伝達され細胞の増殖を促進し、核内転写制御因子であるc-fosやc-mycを誘導する。そこで、特異抗体を用いたウェスタンブロッティングを行った結果、EGF処理1-3時間後にc-fosタンパク質発現の増加を認めた。また移動度の遅延したバンドが見い出されたが、これは活性型MAPKによりリン酸化されたc-fosタンパク質と推測された。さらにc-fos mRNAレベルはEGF処理30分後に急速に、そして一過性に上昇した。また、c-myc mRNAの場合にはEGF処理2時間後に上昇した。
|