研究概要 |
初年度では40-kDa外膜蛋白質がワクチン療法の標的として有用であるかを確認すると共に遺伝子解析結果から膜表面露出領域を予想して、合成ペプチドのどれが合成コンポーネントワクチンとして抗原エピトープとなるかの2点について検討した。P.gingivalis生菌に抗リコンビナント40-kDa外膜蛋白質IgGとウサギ全補体成分を添加することによって本菌の増殖が阻害され、また、リコンビナント40-kDa外膜蛋白質に対するモノクローナル抗体を作製し、本菌とA.viscosusとの共凝集への影響を調べたところ、著明に抑制することを見いだした(日本歯科基礎医学会,1994)。このことから40-kDa外膜蛋白質がワクチン療法の標的として有用であることが示唆された。次に、抗リコンビナント40-kDa外膜蛋白質IgGが認識する8ペプチドを選択し、抗原エピトープとして機能するかを調べた。その結果、N-末端に近いLeu^<44>〜Tyr^<80>,Trp^<67>〜Phe^<86>の2合成ペプチドが抗リコンビナント40-kDa外膜蛋白質抗体と反応することを見いだし、この2か所が、ワクチン療法の標的トしての抗原エピトープペプチドになりうることが判明した。本年度の研究結果から、抗リコンビナント40-kDa外膜蛋白質IgGは、補体系を活性化することが判明し、P.gingivalisに対する殺菌作用が期待できるワクチン療法の標的となりうることが確認できた。また、本外膜蛋白質に対するモノクローナル抗体が、P.gingivalisとA.viscosusとの共凝集を抑制することから病原性の高い細菌叢に遷移することを抑制できるワクチン療法が期待できる。さらに合成ペプチドコンポーネントワクチン開発に向け、抗原エピトープとなりうることが確認できた合成ペプチドをポリリジンコアーに合成し、マルチプル抗原ペプチドを作製した。今後、抗血清を作製し、この抗体を用いて補体活性化能を検討する。
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