研究概要 |
シスタチン分子のカテプシン群(B,H,Cなど)に対する阻害機能部位を検索するために、本年度は組換え型キメラシスタチン分子の合成に着手した。Polymerase Chain Reaction(PCR)法によりキメラDNAセグメントを合成する方法を発明し、シスタチンSとシスタチンCの第一エクソンをそれぞれ交換した2種のキメラシスタチン分子(S1C2C3;S/exon1-C/exon2-C/exon3,C1S2S3;C/exon1-S/exon2-S/exon3)を大腸菌で発現させるとに成功した。組換え型シスタチンS1C2C3はQ-SepharoseとSephacry S-200のカラムで比較的簡単に精製が可能で、シーケンサーによりアミノ末端領域15残基の配列はSSSKEENRIIPGGIY-であると分析された。この実験結果はシスタチンSのシグナルペプチドがキメラシスタチン分子を大腸菌で発現・分泌させる場合でも有効であることを示す。シスタチンC1S2S3は予想に反し発現量が低レベルであったため精製に至っていない。新たな発現ベクターを構築中である。組換え型シスタチンC1S2S3はカテプシンH,Cを天然型シスタチンCとほぼ同程度の強さで阻害したが、カテプシンBに対する阻害活性は天然型のシスタチンCよりも1000倍程度低下していた。
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