研究概要 |
研究期間に得られた研究成果を以下に述べる 1.ヒト顎下腺cDNA試料およびヒト顎下腺cDNAライブラリーよりシスタチンS、シスタチンSA、シスタチンSN、シスタチンCのcDNAクローンを単離した。2.シスタチンS,SA,SN,C,Sの変異体(^<117>Arg→Trp)の高レベル発現・分泌ベクターを構築した。3.組換え型シスタチンS,SA,SN,S(^<117>Arg→Trp)を大腸菌JM109に発現・分泌させ、これらの組換え型シスタチンの精製法をほぼ確立した。4.組換え型シスタチンを大腸菌のペリプラスム空間へ効率良く分泌させる際に必要なシグナルペプチドのアミノ酸配列の条件を確定した。5.Polymerase Chain Reaction(PCR)でシスタチンSとシスタチンCのエクソン単位を交換したキメラ遺伝子を合成する技法を開発した。6.シスタチンSとシスタチンCのキメラ体(複数)を効率よく発現・分泌させるベクターを構築した。7.前述のキメラシスタチンを大腸菌で発現させ、大量精製する方法をほぼ確定した。8.アミノ酸配列分析によって精製した組換え型シスタチンのキャラクタリゼーションを行った。9.精製した組換え型シスタチンのシステインプロテアーゼ(フィシン、パパイン、カテプシンB,C,H)に対する阻害特性を分析した。10.組換え型シスタチンが歯周病菌(P.gingivalis)由来のArg-ジンジパインやLys-ジンジパインの活性を阻害しないことを明らかにした。11.組換え型ヒト唾液シスタチンがP.gingivalis自身の増殖を抑制する機能を保持していることを明らかにした。以上の研究業績は天然型のシスタチン分子のアミノ酸配列に基づき、「色々なシステインプロテアーゼ阻害特性をもった人工型シスタチン分子の設計・生産ができそうである」ことを示唆する。この研究成果は「天然型および組換え型のヒト唾液シスタチンの口腔衛生や歯科治療方面への利用」などにもつながるであろう。
|