破骨細胞に対しカルシトニン(CT)は骨吸収抑制を示すが、この作用機構をイオン動態の面から解明するため、破骨細胞にPatch clamp法を応用し膜電位やイオン電流に対するCTの作用を検討した。破骨細胞は新生児ラットの長管骨より採集しカバーグラス上に培養後、実験に用いた。 まず、Current clampモードにおいて、採集した破骨細胞の膜電位を多数例で検討した結果、その分布は-70mV付近と0mV付近のグループに二分された。また、深い膜電位のグループは脱分極刺激により容易に持続的な脱分極状態に移行した。次に、Voltage clampモードに切り換え、保持電位-70mVにおいて膜電流の構成を検討した。その結果、過分極側への電気刺激では内向き整流K^+電流(I_<Ki>)が優位に発生していたが、脱分極側では大きな電流成分の発生は認められなかった。従って、破骨細胞ではI_<Ki>が静止膜電位の形成に強く関与していると考えられた。 次にこれらの電流にCT(30nM)を投与すると、I_<Ki>の電流値が平均70まで抑制され、その抑制効果は、CT除去後15分程度では部分的にしか回復が認められなかった。また、Current clampモードにおいて、このCTのI_<Ki>抑制作用が破骨細胞の膜電位をどのように変化させるかを検討したが、CT投与により膜電位は持続的な脱分極状態に移行した。 以上のことより、ラット破骨細胞にはI_<Ki>が優位に存在しており、CTはこのK^+チャネルを抑制することにより、膜電位を脱分極させることが解かった。従って、CTがその作用の一貫として、持続的な膜電位変化により破骨細胞の機能を調節している可能性が示唆された。また、補助金により購入した万能倒立顕微鏡は、Patch clamp法において単離細胞を観察する目的に使用した。
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