1.有限要素法を用いて、腫瘍血管および血管周囲の微細な温度分布の推定を試みた。 血管サイズ、血流量、電磁波で発生する熱量などの各種パラメータを変化させた時の、血管および血管周囲の温度分布を、有限要素法で解析した。 本研究の中心テーマである腫瘍内微細温度分布の推定の中でも最も基本となる「血管壁およびその周囲組織」の温度分布は各種パラメータを設定することにより可能であった。 2.温度分布を考察する領域を単一の血管から複数の血管を含む領域に拡大する場合、「血管構築」というパラメータを導入する必要があるが、「血管構築」に関しては自由度がありすぎ、実際の腫瘍血管の情報によりパラメータの設定範囲を限定しなければ意味のある温度分布の推定が困難と考えられた。 腫瘍内血管モデルを検討するにあたって当初「病理学的知見」と「臨床で得られた腫瘍内温度分布」の利用を考えていたが、病理学的知見には腫瘍全体をカバーするような巨視的な知見が少なく、臨床で得られる腫瘍内温度分布もかなり大まかである。もっと別の情報も必要と考えられる。現在血管造影により得られる情報が利用できないか検討中である。 3.平成7年度の研究計画であるが、前述の腫瘍内血管モデルを検討する他、腫瘍内全体の温度分布の推定を試みる予定である。特に従来考慮されていなかった「血流温の腫瘍内での変化」をパラメータとして入れることにより、さらに厳密な温度分布の推定を行う。 さらに臨床上で問題となるパラメータ、たとえば「腫瘍に流入する動脈血温度」、「体表面からの冷却」、「近傍を通る大血管による冷却」、「necrosisの形成」などを考慮した場合の温度分布を検討する。
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