マイクロウェーブによる外部加温において、平衡状態が実現している腫瘍での腫瘍血管およびその周囲の温度分布を有限要素法を用いて検討した。 (方法)腫瘍血管モデルとして、M.W.Dewhirstらの文献から、腫瘍血管の平均の直径を50μ、腫瘍血管の間の平均距離を300μとした。血管は同一方向に走行しているとし、血管を♯の交点に配列するモデルを考えた。 腫瘍の熱的モデルとしては、各血管を結んだ直線の中点で最高温度となるものを考えた。今回、有限要素法は二次元で解析した。 有限要素法による解析では、一つの腫瘍血管に注目し、その血管周囲の最高温度点を連ねた線で囲まれた領域での熱伝導問題として扱った。 節点数452、要素数808、境界条件としては、腫瘍血管内壁を37℃、領域の辺縁を43℃とした。 (結果)腫瘍血管を中心とした、ほぼ同心円状の等温度曲線が得られた。温度勾配は腫瘍血管に近付くほど急峻となっており、領域辺縁部での温度勾配は0.03℃/μ、腫瘍血管では0.10℃/μであった。 仮に腫瘍血管壁の厚さを10μとすると、この腫瘍血管モデルでは、腫瘍内の最高温度が43℃のときに、腫瘍血管細胞の温度は37〜38℃ということになる。 (考察)腫瘍血管の温度がセンサー表示温度よりも低いことが、腫瘍血管に対する温熱効果の減少となり、温熱療法が予期したほどの効果をあげていない原因である可能性が示唆された。
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