研究概要 |
平成6年度は,実験手技の確立と温熱による放射線増感効果についての検討を行った。最初に,実験に用いる各細胞系の細胞密度(LX830:2.0×10^5個/ml,L5178Y:4.0×10^5個/ml),培養時間(LX830:48h,L5178Y:24h),培養液のpH(LX830:7.4,L5178Y:7.3)を決定し,この条件下に各実験を行った. 放射線感受性は,LX830細胞で0.41Gy,親株L5178Y細胞が1.39Gyであった.温熱処理により求めた両細胞の温熱感受性は同じ(43℃,T_0=4.1min)であった.温熱による放射線増感効果を検討するため,放射線照射(LX830:0〜2Gy,L5178Y:0〜6Gy)を行った直後,50%の生存率が得られる温熱処理(43℃:LX830:19min,L5178Y:24min)を行った.その結果,温熱による放射線増感効果は両細胞で同じ値を示した.一般に,温熱による放射線増感効果は,放射線による損傷からの回復を温熱の作用が阻害することにより起こると考えられ,放射線感受性の差は放射線による損傷からの回復の差だと考えられている.しかし本実験においては,放射線感受性が全く違う両細胞が同じ温熱増感効果を示した.この矛盾を説明するためには,いくつかの仮説が考えられる.現在,これらを証明すべく,細胞周期の解析,放射線による亜致死損傷や潜在的致死損傷からの回復について実験中である.次年度はこれに加えて温熱耐性期の放射線増感効果についても検討を行う予定である.
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