研究概要 |
頭頸部癌患者に対する、OK-432活性化リンパ球投与による局所養子免疫療法(AIT)の抗腫瘍効果を免疫学的、分子論的に解明する目的で今年度の研究を進めた。 1.AITの治療効果を腫瘍組織内への単核球浸潤度と組織学的変化を検討することにより以下の結果を得た。AIT施行例は非施行例よりも腫瘍実質内へのT細胞浸潤が多く認められた。NK細胞、B細胞浸潤度には有意の差を認めなかった。また、単核球浸潤の強い部分の腫瘍細胞は、anti-Le^y抗体で染色される細胞が存在し、形態的にもアポトーシスによる腫瘍細胞破壊が示された。 2.腫瘍組織からmRNAを抽出し、RT-PCR法により腫瘍局所での各種サイトカインmRNAの発現を検出、治療前後またはAIT群と非AIT群間で各種サイトカイン発現に違いがあるかどうかを検索した。その結果、IL-1, IL-2mRNAの発現は12例中10例、9例中8例とほとんどすべての腫瘍組織中に認められたが、主に活性化T細胞が産生するIFNγmRNAの発現は12例中6例(50%)にしかみとめられなかった。一方、免疫抑制性サイトカインと考えられているIL-10, Transforming growth factor β(TGFβ)の発現を調べたところ、IL-10は14例中6例、TGFβは100%の症例に認められた。興味あることにIL-10の発現が認められる腫瘍組織中ではIL-2mRNA発現が欠如しており、IL-10によるなんらかの免疫抑制機構が腫瘍局所で作用していることが示唆された。さらに、OK-432活性化単核球の局所投与によるAITを行った患者の治療前後での腫瘍局所のサイトカインmRNAの発現を比較してみると、治療前には認められなかったIFNγやIL-1mRNAの発現が新たに認められた。 これらの結果は、免疫療法の直接効果と考えられ、予後の判定に有用であると考えられた。
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