研究概要 |
本学口腔外科において手術により摘出された歯原性角化嚢胞15例、エナメル上皮腫3例、歯根嚢胞5例について、抗マクロファージ抗体、抗リンパ球抗体の局在を免疫組織化学的に検討した。 1.CD4、CD8サブセットに属するTリンパ球を認識するUCHL-1抗体は、歯根嚢胞や炎症性変化を被った歯原性角化嚢胞では、上皮直下の炎症細胞浸潤層で強く発現していた。非炎症性の嚢胞壁では、線維性組織内に散在性に陽性細胞が観察されたが、最外層の骨に隣接する領域で局所的に集合する傾向が示された。 2.CD68抗原を発現する広い範囲の単球-マクロファージ系細胞を認識するKP1抗体は、UCHL-1抗体同様、炎症巣で強く発現するほか、線維性組織の血管周囲に局在して観察された。骨組織では、反応性骨増生を示す部分に散在する単核細胞が陽性を示すとともに、破骨細胞もこの抗体を認識した。 3.組織在住マクロファージを認識する抗体HAM56は、骨に隣接する結合組織、殊に血管周囲に存在する細胞に観察された。骨梁間に散在する単核細胞一部陽性を示したが、KP一抗体に比べその数は少なかった。また破骨細胞は陰性であった。 4.白血球抗原L1を発現する細胞を認識するMAC387抗体は一部の裏装上皮や炎症巣で強い反応を示したが骨に隣接する部分を含め線維組織ではおおむね陰性であった。 以上の免疫担当細胞の壁内分布から、これらが、嚢胞の増大に伴う骨吸収に何らかの役割を有していることが推測された。これに伴うサイトカイン(IL-1,IL-1R,TGF-β)の分布については、技術的な問題から十分に信頼できる結果を得ておらず、現在検索を続行中である。
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