研究概要 |
歯髄疾患に伴う痛みに関与すると考えられている細い歯髄神経の機能特性を生理学的・神経学的に明確化することを目的とした基礎的研究と,歯科疾患に起因すると考えられる頭頸部の痛みを主訴に歯科外来を受診する患者を対象とした臨床的疫学的研究を合体させた有機的研究を行い,ここまでに以下の通りの成果を得た. 1)ラットの露出させた歯髄に mustard oil などの起炎性化学物質を直接作用させ,その際に誘発される反射性咀嚼筋の筋活動の変異を生理学的に解析した結果,主に化学物質を作用させた歯と同側の咬筋に有意な筋活動の増加を認めた。 2)ネコの歯髄に起炎性化学物質(mustard oil)を直接作用させ,その際に機能的単一歯周組織神経に誘発される神経発射活動を経時的に解析した。機械的刺激に応答する歯根膜線維は,mustard oilを作用させた直後から約30分間その活動性を増加させた。 3)歯髄疾患に起因すると考えられる頭頸部の痛みを主訴に来院した患者について,その症状の解析を主に行ったが,研究対象とした患者数が当初予定していた数より少ないため,統計学的に痛みと症状との有意な関係は得られなかった。 平成6年度には,上述のような結果が得られたが,これは当初に計画した研究計画のほぼ80%の実績と考えられえる。臨床疫学的研究において,研究対象となる臨床症状を持った患者数が少なかったことは如何ともしがたく,平成7年度に来院する患者に期待をつなぐものである。
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