研究概要 |
生体親和性が高く,周囲歯槽骨からの骨伝導能を有するハイドロキシアパタイトと,生体内での吸収性を有するβーリン酸三カルシウムとの複合材料である二相性リン酸カルシウム系人工骨補填材(BCP)顆粒が,歯周組織の再生にどのような役割を果たすかを組織学的に検討した。サル-壁性骨欠損に,BCP顆粒充填とGuided Tissue Regeneration(GTR)法との併用およびGTR法のみの2処置について,術後,3ヶ月後の非脱灰組織標本を作製し,組織学的観察を行った.さらに,近年注目されている骨誘導因子(Bone Morphogenetic Protein,BMP)の担体としての可能性も有していると思われたので,ラット背部皮下にBCP-BMP複合体(recombinant human BMP-2の配合量は,2,10,50μgで,対照群はBCPのみ)を移植し,3週後の異所性骨形成について検討した. BCP顆粒充填と GTR法を併用した場合,GTR法単独の場合よりも,術後3ヶ月の新生骨形成量は少なく,BCP顆粒の存在によって,新生骨形成が遅れることが示唆された.しかし,BCP顆粒と新生骨との親和性は高く,吸収され残ったBCP顆粒の結晶が新生骨の基質として取り込まれている像も多く観察された. ラット背部皮下に移植した実験では,50μg-BMP群では,球状の小さな骨様組織の集団とそれに連続した層板構造を有する新生骨組織の形成が観察された.10μg-BMP群では,1例にのみに50μg-BMP群と同様な新生骨組織が観察された.2μg-BMP群およびコントロール群では,明かな骨様組織の形成は認められなかった.このことより,BCP顆粒はBMPの担体として有効であることが示唆された. 歯周組織再生法への応用を考えた場合,BCP顆粒単独で用いるばかりでなく,BMPなどの成長因子と組合せることにより,歯周組織の再生がより効果的に得られるのではないかと考える.
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