研究概要 |
β-TCPのペレットにTGF-βを凍結吸引乾燥法によりコーティングを施し、人工骨移植材/骨誘導性物質の複合投与の骨形成に対する有効性の検討を試みた。実験動物には10週齢Wistar系雄性ラット20匹を用いた。直径3.0mmの骨欠損を左右の頭頂骨に1箇所ずつ1匹あたり2箇所作製し、実験側にはヒトリコンビナントTGF-β1を1μgコートさせたβ-TCPペレットを移植し、対照側にはTGF-β1を含まない溶媒のみでコートしたβ-TCPペレットを移植した。術後2週、4週で屠殺し、ヘマトキシリン-エオジン重染色、アルカリフォスファターゼ(ALPase),酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ(TRACPase)陽性細胞検出のためアゾ色素法染色を行い、組織学的および細胞化学的に観察した。さらに共焦点レーザー顕微鏡により蛍光発色部位から欠損中の新生骨を同定しその面積をコンピューター画像解析した。その結果、実験側では2週、4週ともに対照側と比較し、多くの骨新生が欠損断端の脳硬膜側から認められた。さらに実験側ではβ-TCPペレットと脳硬膜間にALPase陽性細胞層が対照側と比較して厚く観察され、β-TCP周囲のTRACPase陽性細胞も数多く観察された。また共焦点レーザー顕微鏡所見では、実験側では対照側と比較し、2週屠殺群では9.3±1.7%対3.4±0.8%、4週屠殺群では39.8±10.9%対11.8±2.1%と約3倍広い面積で新生骨の形成が認められた。これより、TGF-β1は母床骨、脳硬膜からALPase陽性の骨芽細胞の誘導を促すことで骨新生を促進し、また活発な骨の改造を引き起こすことが示唆された。一方、β-TCPペレットはTGF-β1を移植部に長期にわたって貯留させるとともに、欠損部が新生骨で修復されるまでの間、スペースを確保するのに効果的であることが明らかになった。
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