研究概要 |
IL-1β,TNF-α,IFN-γ存在下で培養した歯肉線維芽細胞のそれぞれの刺激因子に対する反応性の変化をPGE_2産生能およびコラーゲン合成能の面から調べた。その結果,どのサイトカインで前培養しても程度の大小こそあれ,種々のサイトカインに対する反応性が変化することがわかった。なかでも,IL-1β刺激を受けた歯肉線維芽細胞はTNF-αのPGE_2産生能促進作用を著明に高めることがわかった。また,IL-1βは細胞膜のTNF-αレセプター数と親和性を変化させていることも明らかにした。したがって,歯肉線維芽細胞において,IL-1βはPGE_2産生を導くTNF-αレセプターの様態を変化させ,TNF-αに対する歯肉線維芽細胞の応答性を制御している可能性が高いと考えられる。 このように,IL-1βによってTNF-αレセプターの様態が変化することがわかり,歯周病の病態を歯肉線維芽細胞の亜群構成の変化から捉えようとするときにレセプターの変化で調べていく重要性を確認した。すなわち,IL-1βは炎症時に歯肉組織中に著明に増加するサイトカインであり,この歯肉炎組織の生体反応を想定すると,IL-1βはTNF-αのレセプターを変化させて歯肉線維芽細胞の機能,ひいては歯周組織の破壊と修復に関与している可能性が示された。今後,IL-1β存在下で長期間培養した細胞におけるTNF-αレセプター様態の変化およびTNF-αに対する細胞機能応答の変化を調べる予定である。
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