研究概要 |
(研究目的) インターロイキン-8(IL-8)は好中球走化性因子であり,生体防御に重要な役割を果たす。In vitroの研究では,ヒト歯肉線維芽細胞はIL-8を産生するとされている。しかしながら炎症局所においてどのような細胞がIL-8を産生するのか,歯周炎の病巣におけるIL-8産生の動態は明確にされていない。そこで微量の遺伝子転写産物を特異的に検出することができるin situハイブリダイゼーション(ISH)によって以下のことを明らかにすることを目的とした。 1.炎症歯肉組織あるいは実験的炎症組織におけるIL-8遺伝子発現細胞の同定。 2.各種サイトカインあるいはLPSで刺激した培養歯肉線維芽細胞におけるIL-8遺伝子発現動態。 (研究の進展状況) 1.ヒト炎症歯肉ならびにマウス皮膚から作成した組織標本でISHを行い,遺伝子転写産物を高感度に検出することに成功した。 2.サイトカイン刺激した健常皮膚では,角化細胞ならびに血管内皮細胞にIL-8遺伝子を検出した。しかしながら,線維芽細胞にはIL-8遺伝子発現を検出しなかった。 (新たに得られた知見) 健常皮膚では,角化細胞ならびに血管内皮細胞はサイトカイン刺激によってIL-8遺伝子発現を誘導される。しかしながら,線維芽細胞はサイトカインで刺激してもIL-8遺伝子発現を発現しない。さらに炎症歯肉組織においても線維芽細胞にIL-8mRNAを検出しなかった。以上のことから,線維芽細胞におけるIL-8遺伝子発現誘導の過程は角化細胞ならびに血管内皮細胞のそれらとは異なるものと推定される。
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