5種の市販レジンセメント(パナビア21、インパーバデュアル、ビスタイトレジンセメント、CRインレーセメント、クラパールDC)において気泡混入量を測定し、セメントの稠度、機械的性質(曲げ強さ)、耐摩耗性との関係についてin vitroで検討した。粉液型セメントでは、ペースト.ペースト型セメントに比べ気泡混入量が約10倍多いことがわかった。また、試料割断面に露出した気泡断面の直径を測定すると、粉液型セメントでは30μm以上の大きい気泡が多数混入されているのに対し、ペースト・ペースト型セメントでは10μm以下の小さな気泡の比率が多い傾向があった。セメントの気泡混入量と練和時の稠度との関係では、粉液タイプおよびペースト・ペーストタイプとをまとめて判断すると、傾向は明瞭ではなかった。しかし、ビスタイトレジンセメント、パナビア21、クラパールの3種のペースト・ペーストタイプのセメントにおける気泡混入量と稠度との関係では、両者の間には負の相関関係が認められた。いずれのセメントも気泡混入量が増加すると曲げ強さが減少する傾向が認められた。摩耗試験では、CRインレーセメントの耐摩耗性が最も低く、パナビア21、インパーバデュアル、クラパールDCの順に高くなり、ビスタイトレジンセメントが最も良好な耐摩耗性を示した。5種のセメント間では、気泡混入量は特に摩耗性とは関連していないようであったが、同一種のセメント試料で調べると、気泡混入量が増加すると、摩耗量も増加した。また、臨床において上記レジンセメントでキャスタブルセラミックインレーを合着し、臨床的にセメントの摩耗性を検討したところ、CRインレーセメントおよびパナビア21の摩耗量が大きい傾向が認められたが、臨床的には気泡混入量との関連は明確にはできなかった。
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