研究概要 |
コンポジットレジンインレー(以後,CRインレー)の重合方法として,加熱重合のみ行う方法,あるいは光重合後に加熱して重合を追加する方法がある。両重合法ともCRインレーの諸物性向上には有意義であった。しかしながら,長期臨床経過観察において辺縁破折や辺縁着色などで充分に満足できるものではなかった。そこで,CRインレーを臨床においてさらに有効な修復材料とするため,マイクロ波を応用してCRインレーの開発を行い機械的性質から重合開始剤濃度の影響について検討を行った。 照射するマイクロ波は,2450MHzの周波数で一定として行った。実験で使用したモノマーは、Bis-GMA・TEGDMAを重量比で60:40に調整した。このコモノマーに対して重合開始剤である過酸化ベンゾイル(以後,BPO)を0.1wt%,0.3wt%,0.5wt%,1.0wt%添加した4種類をベースモノマーとした。測定用試料は,テフロン型に調整されたベースモノマーを填入しマイクロ波を5分間照射して作製された。 圧縮試験の結果,BPO量が0.1wt%のベースモノマーが71.4MPaと最小値を示し,BPOの増加と伴に圧縮強度は大きくなる傾向が認められ,0.5wt%添加のベースモノマーで98.9MPaと最大値であった。 ヌープ硬度の結果,BPO添加量の増加と伴に硬度が高くなり,BPOを0.5wt%添加したベースモノマーで表面で20.1,裏面で21.3と最大値を示し,圧縮強度と同様な傾向が認められた。また、各ベースモノマーとも裏面が表面よりも高い値を示したがこれは酸素による重合抑制によるものと考えられる。 これらのことから,マイクロ波重合型CRインレーの物性は重合開始剤の濃度に影響され,重合開始剤の添加量が最低でも0.5wt%必要であることが認められた。
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