窩縁がエナメル質と象牙質で構成されている楔状欠損部におけるコンポジットレジン修復の臨床成績は、レジンに対する接着強さの弱い歯肉側象牙質壁に辺縁漏洩が生じやすく、良好と言い難かった。最近、象牙質に対してもエナメル質と同等の接着強さを示すといわれる接着システムが開発され出した。そこで、本研究では、エナメル質と象牙質に対する接着強さの相対的関係ならびに欠損形態が、楔状欠損の辺縁封鎖性ならびに窩壁適合性に及ぼす影響について検討を加えた。先ず、従来より当教室で行われている方法に従って、各接着システムのエナメル質及び象牙質平坦面に対する接着強さの測定を行った。次いで、歯頸部に浅い楔状欠損窩洞(SW型窩洞)およびU型楔状欠損窩洞(U型窩洞)を形成し、メーカー指示書に従って修復を行い、半数はサーマルストレス負荷後、色素浸透試験を行った。さらに、修復物の断面レプリカ模型を作製し、窩壁適合状態の観察をSEMにて行った。 これらの結果、以下のような知見が得られた。1.最近開発された接着システムには、エナメル質と象牙質に対する接着強さに有意差が認められないシステムが見られた。2.平坦面を用いた引張り接着強さ試験では、サーマルストレスの影響は認められなかったが、窩洞を用いた辺縁漏洩試験では、サーマルストレスの影響が認められた。3.エナメル質の方が有意に高い接着強さを示すシステムを用いた場合、窩洞形態にかかわらず、歯肉側象牙質壁に色素の侵入が認められた。これに対し、エナメル質と象牙質に対し同等の接着強さを示すシステムを用いた場合、窩洞形態によって漏洩パターンが異なった。即ち、SW型窩洞では歯頂側エナメル質壁の辺縁封鎖性が著しく劣化したのに対し、U型窩洞では歯頂側および歯肉側の両側における封鎖性の劣化がみられた。4.従来のシステムと異なり、最近のシステムでは窩底部においても比較的良好な適合状態が観察された。
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