研究概要 |
本年度の研究目的は,In vitroの評価系によるNOの炎症局所における役割について,とくにメタロプロテアーゼおよびシクロキシゲナーゼ活性を指標として検討することである。 ヒト好中球におけるNO_2/NO_3の産生量を測定した結果,ヒト好中球はラット好中球とは異なり,A.aLPSあるいはIL-1によるNO_2/NO_3の産生を認めなかった。しかしながら,superoxide disumutase (SOD)の存在下においてはその産生が認められた。つぎに,NOの炎症局所における役割について,メタロプロテアーゼおよびシクロキシゲナーゼ活性を指標として検討を行った。その結果,IL-1による歯肉線維芽細胞のコラゲナーゼ活性は,NMMAの組み合わせ添加によって抑制された。また,ストロムライシン活性もコラゲナーゼ活性と同様の傾向を示した。さらに,ストロムライシン活性へのNO供与体であるSNAPの影響を調べた結果,SNAPはIL-1による歯肉線維芽細胞のストロムライシン活性を濃度依存的に増強した。一方,シクロキシゲナーゼの活性化におよぼすNOの影響をその代謝産物であるPGE_2の合成能を指標として調べた結果,IL-1とNMMAの組み合わせ添加は,IL-1によるPGE_2の合成能を抑制した。さらに,SNAPの添加はIL-1による歯肉線維芽細胞のPGE_2の合成能を濃度依存的に増強した。 これらの結果は,NOが歯周組織破壊に関与するメタロプロテアーゼやシクロキシゲナーゼの活性化におけるmodulatorとして働いている可能性を示唆している。
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