研究概要 |
新規試作メタクリル酸誘導体モノマー(キシリトールメタクリレート:XM)はキシリトールをメタクリロイルクロリドを用いてアシル化する方法を用いて合成した。すあわち、無水ピリジン中にキシリトールとともにハイドロキノンおよび触媒ジメチルアミノピリジン(DMAP)を溶解し、アルゴン雰囲気下でメタクリロイルクロリドを1滴ずつ滴下させながら完全に溶解した。この化合物溶液中のXMはEtOH : CHCl_3=7.3の展開溶媒を用いると薄層クロマトグラフィー上でRf=0.3の位置に展開されることが明らかとなったことから該当位置に展開したXMを回収し,その化学構造を赤外線吸収スペクトルによって確認した。本合成法における無水ピリジン,およびメタクリロイルクロリドの至適量はキシリトール1等量に対して各々18.55等量、1.3等量であり、XMの収率は24.4%程度であった。 次いで5〜55%XM水溶液を試作プライマーとして調製し、これらの象牙質接着性に与える効果を象牙質円柱窩洞におけるコントラクションギャップの観察および象牙質平面に対する引っ張り接着強さの計測によって評価した。象牙質窩壁および象牙質平面の清掃には0.5M EDTAを用い、各試作プライマーで処理した後、Clearfil Photo Bondを介してSilux Plusと接着させた。この結果、30〜50%キシリトールメタクリレート水溶液でプライマー処理したすべての試片で象牙質円柱窩洞に対するコンポジットの完全な辺縁適合性が観察された。これら濃度のプライマーは象牙質平面に対する引っ張り接着強さも16.8±5.8MPa[35%]、20.9±4.1MPa[45%]と十分であった。本研究で新規合成されたXMは30〜50%水溶液でコントラクションギャップフリーボンディングシステムを構成しうること確認された。臨床応用に先立ち皮膚組織に対する副作用についても十分な検討が必要と考えられる。
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