急性炎症期が歯周炎の活動期に当たるか?また、活動期の指標となり得る歯肉溝滲出液(GCF)中のindicatorは何か?を知る目的で、急性炎症期およびその後の慢性炎症期の同一歯周ポケットから採取したGCFの量とその中に含まれる各炎症性因子の量の測定を行った。過去に急性炎症の既往のある、6mm以上の臨床的ポケット深さを有する歯周ポケットを3か所選択し、初診時に同歯周ポケットにおいて(1)臨床的パラメーター(臨床的ポケット深さ、臨床的アタッチメントレベル)の診査、(2)GCF量の測定、(3)GCFの採取(-80で保存)を行った。また、急性炎症の徴候がみられた時点ですぐさま患者を来院させ、同様のことを行い決められた抗生剤および消炎鎮痛剤を4日分処方した。その後急性炎症が完全に消失するまで1週間毎に、またその後は2週間毎に4回来院させ、同ポケットのGCF量の測定とGCFの採取を行った。採取したすべてのGCF中のIL-1β量、PGE_2量、コラゲナーゼ活性を測定し、その経時的変化を確認したところ以下の結果を得た。(1)三か所の歯周ポケットとも、初診時と比較して急性炎症期において一時的なポケット深さの増加、アタッチメントロス、GCF量の増加が認められたが、これらはいずれも急性症状の消退にともない初診時の値まで回復した。(2)GCF量およびGCF中のいずれの因子(IL-1β量、PGE_2量、コラゲナーゼ活性)共、初診時と比較して急性炎症期において有意に高い値を示していたが、これらの値は急性炎症の消退と共に初診時のレベルにまで減少した。これらの結果から、GCF量およびGCF中の各因子の値は炎症の程度の指標になり得ることが示されたが、今回の症例では急性炎症期前期のアタッチメントレベルの変化が認められなかったことから、これらが歯周病のdiseaase activityの指標となり得るかは明らかでなかった。現在、さらに症例を増やして検討中である。
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