研究概要 |
1.ハイブリットおよびマイクロフィラータイプのコンポジットレジンに対し(1H, 1H, 2H, 2H-henicosafluorododesyl)trimethoxysilane (以後10F2S-3Mと略す)を小筆,濾紙,および還流の3方法を用いて改質を施し,紅茶およびオイルオレンジを用いる着色抵抗性試験および接触角を検討した.その結果,1)改質直後の接触角は対照に比較して有意に高い値であった.紅茶とオイルオレンジに4週間保管した場合は有意に低下したが,超音波洗浄で付着した色素を除去すると有意に上昇した.特に紅茶に保管した群は蒸留水保管群と同等なまでに回復した.2)改質したコンポジットレジンの着色は対照に比べて著しく少なく,また,超音波洗浄にて用意に脱離した.3)改質効果はハイブリッドタイプコンポジットレジンにおいて高かった.4)10F2S-3Mによる表面改質は臨床においてもコンポジットレジンの着色を抑制し,容易な脱理性を与えることが可能であることが示唆された.5)改質方法による明確な差は認められなかった. 2.通常ガラスの表面処理に用いられている3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(MPSと略す)にフッ素炭素鎖が1, 4, 8および10のフルオロカーボン鎖のシランカップリング剤を各種濃度で添加し,市販ガラス片を改質後,化学重合型コンポジットレジンを接着し引っ張り接着強さを測定した.その結果,1)フッ化炭素鎖が1および4のフルオロカーボン系シランカップリング剤を40%添加した場合の引っ張り接着強さは16MPaとMPS単独処理に比較して約2倍の値を示し、水中保存やサーマルストレスに対しても優れた耐久性を示した.2)この混合シランカップリング剤を用いて試作したコンポジットレジンの引っ張り強さは,28,000回のサーマルストレスを与えても何ら低下せず,極めて高い値を維持した.3)MPSとフルオロカーボン鎖のシランカップリング剤の加水分解性は同様であった事から,各シランともガラス上で同じように共縮合してシロキサン多分子層を形成するものと考えられた. 3.コンポジットレジンおよびガラスに対し47℃で2時間還流により10F2S-3M処理を施し,in vitroにてS. mutans Ingbritt株を用い人工プラーク付着実験,および脱離実験を行なった.1)処理群のプラーク総付着量は対照群と比較して有意差に減少した.2)細菌の付着は極めて弱く,PTFEと同様に弱い超音波洗浄で容易に脱離し,試片上の残存量は非処理群の約1/1,000であった.3)コンポジットレジンに処理面の表面自由エネルギーはPTFEの21.6mN/mより低い12.2mN/mという値まで低下させることができたことより,プラークの付着抑制ならびに清掃を簡易にする事が可能であることを示唆した.
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