研究概要 |
1.実験的疲労については検査前に予備的実験を行ない,被験者の可能な範囲で咬筋のエネルギー代謝の変化が起こる負荷条件を決定することができた.15EA02:2.この条件で実験的疲労前後の咬筋の表面電極による筋電図検査,および,^<31>P-magnetic resonance spectroscopy(以下^<31>P-MRSと略す)検査を行ない,筋疲労時から回復期にかけての経時的変化のパターンを把握することができた.すなわち,筋疲労時において,^<31>P-MRS検査では筋組織内のクレアチンリン酸の減少,無機リンの増加,筋電図検査では累積周波数値の低域シフトが起こり,その後,疲労の回復に伴い徐々に安静時の値に戻ることが認められた.そして,これらの経時的変化のパターンは両検査で類似していた. 3.顎関節症の患者と正常者を比較すると顎関節症患者の方が筋疲労の回復が遅れる可能性が筋電図検査結果,^<31>P-MRS検査結果のいずれからも推測できた. 以上のように,^<31>P-MRSによる咬筋組織内のエネルギー代謝分析による筋組織の疲労の分析結果と咀嚼筋筋電図による筋活動の分析結果との比較が可能となり,筋疲労と咀嚼筋筋電図の関係が徐々に明らかになってきた.しかし,両検査の特性上,疲労回復時の安静状態を安全には同一の状態にできないという問題が生じ,今後の課題と思われた.また,現状では^<31>P-MRS検査に非常に長時間を要するため,被験者数がまだ少なく,咀嚼筋筋電図分析が顎関節症患者の筋疲労の有無や程度の診査法として臨床応用可能かどうかを結論づけるためには,さらに被験者を増やす必要がある.
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