研究概要 |
咬筋に疼痛や過緊張などの筋症状を有していた4名の顎関節症患者について,筋電図咀嚼リズム分析結果と^<31>P-MRS(magnetic resonance spectroscopy)検査によるエネルギー代謝分析結果の関連性を調べた結果,以下の知見を得た. 1.^<31>P-MRS検査では4名ともPCr/β-ATPの減少がみられ,正常値を大きく外れていた. 2.筋電図咀嚼リズムのCV値は,患者群の平均値が正常者の平均値よりも大きい傾向を示した.しかし,個々のデータを比較すると患者の値と正常者の値が逆転している例がいくつもみられ,測定データの^<31>P-MRS検査との一致率は低く,患者特異性に乏しかった.これは,筋活動のリズムには疲労などの筋組織内の異常の有無のほかに咬合異常,顎関節内部の異常,神経伝達系の異常の有無など他の因子も関与しているためと考えられた. 3.咀嚼運動時の筋電図におけるinterval/cycle timeの正常者群の平均値は右咬筋が0.518,左は0.538であった.一方,患者群の平均値は右咬筋が0.624,左が0.616と明らかな増加がみられ,cycle timeの中でのintervalが占める割合が高くなる傾向を示した.個々の値でみると,一部,正常者と患者のデータの逆転がみられ,MRSによる診断結果と100%の一致はみられなかったものの,患者の疲労と測定データの関係はCV値よりも強い傾向を示した. 4.治療前後を比較した1例では,治療による筋症状の改善に伴い,PCr/β-ATPは正常値近くまで増加したのに対し,筋電図のinterval/cycle timeは術前後で大きな変化を示さなかった.しかし,波形を比較すると,術前はburstの立上りと終止部分が正常者のように明瞭でなく,この部位に起因するdurationの延長が推測されたのに対し,術後は波形が改善されていた.そのため,筋電図咀嚼リズム分析により筋疲労を診査する場合は,筋放電波形の異常パタンの有無も考慮しながら評価する必要があるものと思われた.
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