研究概要 |
歯科補綴物における異種材料間のモードI(開口型)およびモードII(面内剪断型)界面破壊靱性に関する試験方法を策定するために,試みとしてオ-ペク陶材/メタル界面を対象に,特に試験片の形状寸法に注目し検討した.試験片は,幅5mmと10mm,長さ50mmのメタル/オペーク陶材/メタル構成によるサンドイッチ構造とし,その端面の片側界面には,カッターナイフの片刃によって導入した長さ6〜15mmの予亀裂が付与されている.厚さは,メタル層が各0.5mm,オペーク層が0.3〜0.6mmの範囲で変化させた.なお,メタルにはユニメタル(Ni-Cr系合金,松風)を,オペーク陶材にはユニボンドヴィンテージ(A3,松風)を用いた.モードIの試験の場合には,さらに,亀裂付与側のメタル両表面端部にはピン負荷用のアルミブロック(5×5×5mm,穴φ3mm)が接着されている.最初に,モードIの試験は,2個のピン負荷用ブロックを介して引張荷重を加え,そのときの荷重-亀裂開口変位線図を測定し,限界荷重に達したときに進展する亀裂長さをデジタル読取顕微鏡により測定し行った.その結果,オペーク陶材が厚いほど完全界面破壊となり,界面破壊靱性値は最大荷重を超えた範囲では一定となる傾向を示した.予亀裂長さは10〜15mmの範囲が好ましい.試験速度は0.05mm/minが適正であった.次に,モードIIの試験は,3点曲げ試験(支点間距離30mm)により行った.この試験の場合には,不安定破壊となるので,破壊靱性値は最大荷重時またはコンプライアンスを5%オフセットさせたときの荷重を限界荷重として算出した.その結果,5%オフセット時の破壊靱性値は,最大荷重時の場合よりもかなりバラツキを小さく押さえることができた.オペーク層,予亀裂長さの影響は認められなかった.モードIIの値はモードIの値よりも大きくなる傾向を示した.以上の結果から,これらの試験法は,界面破壊靱性を測定するために有効であることが分かった.
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