研究概要 |
緒言 歯の象牙質と修復用レジンの接着強化を目的に,生体親和性が期待できるアパタイトを含有したボンディング材を開発し,その接着効果および接着機構解明を行った.すなわち,脱灰象牙質(コラーゲン層)に対する2-hydroxyethyl methacrylate(HEMA)溶液によるコラーゲン線維の固定化効果およびアパタイト含有N,O-dimethacryloyl tyrosine(DMTY)-HEMAボンディング材の浸透拡散性について検討した. 方法 1.象牙質被着面を40%リン酸水溶液で処理してコラーゲンを露出した後,各種HEMA系プライマーを作用させてSEM観察を行った.2.DMTY-HEMAモノマーに20_<wt>%のヒドロキシアパタイトおよび光重合触媒を添加してボンディング材を調製した.3.象牙質とコンポジットレジンの接着資料は,上述のプライマーおよびボンディング材を作用して作製した後,接着境界部をイオンエッチングあるいは酸と有機質溶解剤によって処理し,その形態をSEMを用いて観察した. 結果 象牙質の脱灰コラーゲン層の固定化とHEMA溶液の関係において,コラーゲン線維を保持して固定できたのは溶媒に水を使用して場合で,エタノール,ベンゼンおよび100%HEMAでは固定しなかった.一方,上述したHEMA/水から成るプライマー処理した被着面に試作のアパタイト含有ボンディング剤を作用させると,コラーゲン線維間(約0.05〜0.2μm)にアパタイトを含んだモノマーが浸透して重合していることがSEM像から確認された. 結論 コラーゲン線維の固定化は,プライマーとしたHEMAの希釈溶媒に影響される.本接着システムにおいて,象牙質とコンポジットレジン間にコラーゲン,アパタイトおよびレジンの3成分から成る新しい層が生成することが判ったた.
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