研究概要 |
歯面ことに象牙質との接着性を増強することを目的として,象牙質面の化学成分であるコラーゲン,ハイドロキシアパタイトの未端基(-OH,NH_2,-COOH)と高反応性のイソシアネート基(-NCO)をもつメタクリレートを合成し,このものを接着性プライマーとして使用するものである。 このプライマーの合成には,2,4-TDI(toluene 2,4-diisocyanate)と水酸基をもつモノマー,2-HEMA(2-hydroxyethyl methacrylate)を附加反応をさせ,2,4-TDIのo-位のNCO基を残したTIM(toluene 2-isocyanate,4-methacryloxyethyl carbamate)を合成した。このプライマーは反応性が高いため,アンプルに封入した状態で保存するものである。 ボンディング剤には,2,4-TDIと2-HEMAの反応生成物であるDME-TDC(dimethacryloxyethyl toluene 2,4-dicarbamate),TEGDMA(triethylene glycol dimethacrylate),Bis-GMA(bis-phenol A dimethacrylate)等の2官能性モノマーの混合物モノマーミクスチュアーを使用した。また試作のコンポジットレジンにはN3500(2,4,6-carbonyl 1,3,5-tridzine hexamethylene isocyanate)と2-HEMAの反応生成物をベースモノマーとし,無機フィラーを配合した試作レジンを使用した。 歯面ことに象牙質表面でのプライマーの反応性は良好で,歯面(象牙質面)での化学的結合(ウレタン結合)が生成していることが確認された。他方試作ボンディング剤とは,他端のメタクリロイル基を介してラジカル重量の行われていることが確認された。また熱分析の結果から,これらボンディング剤,試作コンポジットレジンの光重合挙動は,極めて良好で,象牙質はこのプライマーを介してウレタン系多官能性モノマーと良好な共重合性を有することが確認出来た。 これらの成績から,本素材の接着性プライマーとしての歯科的応用は,in vitroの条件下では,有効な接着性向上因子として作用しているものと考えられた。
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