リン酸カルシウムセメントの機械的強度の向上を目指して、構成成分の一つであるCa_4(PO_4)_2O(TTCP)について、粒径およびCa/P比を変えてを調製しセメント硬化体のダイアメトラル引張強さ(DTS)を測定した。さらに、0.05Mトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン-塩酸緩衝液でpH7.4にした擬似体液中に一定期間浸せきし強度の変化を調べた。Ca/P比が2、45μm篩全通のTTCPとそれをメノ-製ボールミルで1時間および5時間粉砕して粒径を変えた計3種のTTCPをCaHPO_4(DCPA)とモル比1:1で混合してリン酸カルシウムセメント粉末を調製し、25mMリン酸水溶液で練和し硬化体を得た。1日後のDTSは45μm以下のTTCPを用いた場合で約2.5MPa、粉砕したTTCPを用いた試料では1日後においても硬化していなかった。Ca/P比=2、1.96、1.9のTTCP(45μm全通)を用いたセメントでは、比が小さい程、DTSが増加する傾向にあった。X線回折による同定では、強度の低い場合には、アパタイトの生成率がかなり低いことがわかった。一方、疑似体液中における耐久性を検討するために、Ca/P=1.96と1.9のTTCPから作成したセメント硬化体を37℃で、12日間疑似体液中に浸せきした後、DTSを測定したところ、前者では、1日強度に対して約40%の強度低下が見られたのに対し、後者の試料では、約80%の強度増加が見られた。しかし、硬化体中のTTCPは、どちらも、大部分がアパタイトに転化しておりその生成量はほぼ同程度であった。セメントの強度を向上させるためには、TTCPの粒径は、ある程度大きい方が(10μm程度)良いことがわかった。また、強度、耐久性を改善するためにCa/P比の異なる(1.9〜1.7程度)TTCPを用いることがひとつの可能性として示唆された。
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