エナメル質/象牙質構成比の異なる厚さ2mmのウシ歯質板中央に設けた直径3mmの貫通円孔を擬似窩洞とし、これを歯科用合金、コンポジットレジン、あるいは陶材で作製したインレーと歯科用セメントで修復した。独自に開発した非破壊連続定量測定可能な辺縁封鎖性試験機を用い、これらの歯科修復辺縁からの熱サイクル負荷環境下における染料トレーサーの微小漏洩を逐次検出した。 充填系およびインレー系修復で認められた漏洩速度が順次減少する漏洩挙動は測定時修復辺縁部付近に気泡が付着することによって生じるもので、正常な測定状態ではいずれも漏洩速度を増加させながら一定速度に収歛する漏洩挙動を示した。これらの漏洩挙動は負荷熱サイクル数に関する高次多項式で記述できた。 高次多項式の熱サイクル軸切片で示される完全封鎖性維持期間は修復材料、あるいはエナメル質/象牙質構成比について再現性に乏しく、これら因子の明瞭な寄与は検出できなかった。これは完全封鎖維持期間には修復時に発生する残留応力の影響が無視し得ないためであると推察された。ただ、漏洩が定常状態となった場合の漏洩速度と修復材料の熱膨張係数の間には弱いながら正の相関が認められた。 本試験法は現行の歯科材料の辺縁封鎖性の定量的スクリーニングには非常に有効であることが再確認できたが、窩洞や修復材料の諸物性と辺縁封鎖性の定量的因果を明らかにするためには、複雑な組成の歯質試料ではなく、安定な物性を示す人工材料窩洞を使用したモデル化が必須であると思われる。
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