研究概要 |
平成6年度はまず,標準的なアパタイト焼結体を作製するため,アパアタイトの合成条件と粉末の焼結条件を変えて種々のアパタイト焼結体を作製し,その密度,破壊靱性,平均粒径そして弾性率を測定して最適な焼結体作製条件を決定した。次にこの焼結体の表面を鏡面研磨し,その時研磨によって試料表面近傍に残留する応力を測定した。これは,水溶液中でのアパタイト焼結体の疲労寿命を支配するSubcritical Crack Growthが試料表面に存在する残留応力の影響を強く受けるためである。具体的には,微小硬度計を用いて試料表面に圧子を圧入し,圧痕から発生するメジアンクラックの長さを試料の表面をバフ研磨しつつ測定し、研磨除去層の厚さとメジアンクラックの長さの関係から残留応力が存在しなくなる研磨除去層の厚さを決定した。このようにして,残留応力が存在しない研磨面を持つ焼結体試料を作製した。 次に,試料表面にビッカース圧子で圧痕を形成し,その圧痕の端から成長するメジアンクラックの長さを蒸留水中(37℃)での浸漬時間の関数として測定した。このクラックは圧痕周囲に発生した残留応力によって,クラックの存在する環境に依存して成長する。このクラックの成長挙動を特性づけるのが疲労パラメータである。得られたクラック成長データから疲労寿命を特性づけるのが疲労パラメータを決定し,さらにこの決定された疲労パラメータの精度を統計理論を用いて解析し,この方法の信頼性を検証した。その結果,本研究で用いたPost-Indentation法は従来疲労パラメータの測定を用いられてきた動疲労試験や静疲労試験と同様な測定精度を持つことが確認され,この方法では一つの試料でクラックの成長過程が追跡できるために種々の環境下での疲労パラメータの測定には従来の方法よりも有効であることが明らかになった。
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