研究概要 |
マイカ-βスポジウムメンのガラス・セラミックスを応用した,オリンパス・キャスタブル・セラミックス(OCC)は審美性,生体親和性の点ばかりでなく,鋳造成型可能なことと,研削性の良いことで歯科修復材料として導入された.しかしその脆性のため破折が強く懸念され,何らかの加勢が必要と思われる.本年は,1)臨床適応したものの失敗率と成功の平均時間を推定した.2)OCCをTiに鋳接したものは,Tiの酸化層が透過して黒ずんで見えるため,ボンディング・ポーセレン(BP)でマスクする必要がある.そこでこの3者の界面と接合状態を調べた.3)鋳造体から結晶化過程での収縮率が不明であるため,熱膨張分析装置を用いて計測した. 結果として以下のことが判明した. 1)65本のOCCクラウンを25人の患者に装着し,最長5年の経過を追跡した結果,破折率は29%であり,内訳は前歯部26%(7/27),小臼歯部25%(5/20),大臼歯部39%(7/18)であった(食品ではない硬い物質を咬砕して破折した5例を除くと23%(14/60)の修正値となる).破折までの装着時間は平均27.9±9.7ヵ月であった.Kaplan-Meier法を用いた平均生存時間は約40ヵ月(修正データでは47ヵ月)と推定され,歯科材料としては不十分なものであり,やはり補強の必要を臨床的に確認できた. 2)OCC-BP-Tiの直接の界面は良好な接合状態を示すが,表層に近いTi内層部の酸化膜を含む埋没材反応層と考えられる内部でクラックが認められた.これは今後構造解析よりも表面処理,長時間の結晶化の過程でおこるTiの熱的挙動を精査し,新たな方法を考察すべきことを示すものと考えられる. 3)示差熱分析(TGIDTA)での結果より結晶析出温度までを毎分3℃で昇温させた時の膨張曲線をTMAで分析した結果,57℃付近から750℃までに急激に収縮し(約1.9%),その後900℃まで上昇する間および冷却のサイクルではわずかな変動を示すだけであった.
|