研究概要 |
平成8年度には,本研究の一部が「マンディブラ-キネジオグラムによる口唇・口蓋裂患者の下顎運動の評価」として発表された.この研究発表は,下顎運動を日常臨床で総合的かつ簡単に捉えるため,マンディブラ-キネジオグラムの下顎運動パターンの異常の有無を0〜10までの11段階の点数で評価する.下顎運動障害示数,Total Mandibular Kinetic Score,略してTMKスコアを,提唱したものである.これによって個人の下顎運動の障害度を数値化して評価できるようになっただけでなく,集団間の比較の容易となった. 平成7年度に収集した対照群となるほぼ同年代の口唇裂口蓋裂のない成人女子の咬合系の機能に関するデータが不足していたため,東北大学歯学部学生を対象としてまずこの対照群のデータを採得した.その上で片側性口唇口蓋裂群と対照群の研究対象症例数を増やして比較検討した.その結果,片側性口唇口蓋裂群では,対照群に比べてTMKスコアが高いことがわかった. また,永久歯咬合形成がほぼ完了した,あるいは軽度不正咬合が認められる口唇裂口蓋裂成人患者の対象に(口唇裂口蓋裂群),試料としてATP顆粒剤を用い,増田の方法にしたがって咀嚼能力を測定した.対照群は,東北大学歯学部学生・医局員とした.測定結果を男女別に比較した結果,男女とも口唇裂口蓋裂群の方が対照群よりも低値であり,女子において有意差が認められた.
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