研究概要 |
下顎運動を評価する目的で,マンディブラ-キネジオグラフ(MKG)を用いた.3つの主な下顎運動,すなわち,習慣性開閉運動,急速開閉運動,下顎安静位,を記録して,その中の10項目のパターンについて評価した.そして3つの下顎運動の中の10項目のパターンについて異常を認めた項目数を、0点から10点までの11段階に点数化した.この点数を,われわれは,下顎運動総合スコアTotal Mandibular Kinetic Score(略してTMKスコア)と命名した.東北大学歯学部附属病院顎口腔機能治療部において咬合管理を行っている患者の中,歯科矯正治療がほぼ終了した片側口唇口蓋裂患者(UCLP群)について,口唇裂口蓋裂のないものを対照(対照群)として、TMKスコアによる総合的下顎運動解析方法を応用した.その結果,習慣性開閉運動,急速開閉運動,下顎安静位のいずれの下顎運動においても,UCLP群では対照群と比較して異常を認めるものが多かった.また,UCLP群の平均TMKスコアは,対照群よりも有意に大きい値であった.さらに歯科矯正治療がほぼ終了した口唇裂口蓋裂患者の咀嚼能力を,増田(1982)のATP顆粒剤を用いた吸光度分析法を用いて測定した.対照群は,同年代の成人とした.口唇裂口蓋裂群は,対照群よりも低値であった.以上の結果から,歯科矯正治療で永久歯咬合を形成してもなお,口唇裂口蓋裂患者は咀嚼機能が低いこと,また,口唇裂口蓋裂患者の咬合管理には,下顎運動に関する解析が重要であることが示された.
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