研究課題
骨形成タンパクによる骨形成のサイトカインによる促進および制御法の検討を行うため、BMPの臨床応用を想定したヒト骨組織での実験系の開発に主眼を置き以下の実験を行った。まず、実験動物にヒト骨組織が生着可能かどうかを検討するため、C. B-17 scidマウスにヒト骨組織を移植し、採取した組織について、ヒトおよびマウスのMHC Class I抗原に対する抗体を用いて免疫組織化学的に染色し、移植した骨組織部に形成された新生骨がヒト由来であるかどうかについて検討した。その結果,移植後1-4か月経過した時点において、移植骨部に形成された新生骨に認められる骨芽細胞は、マウスClass I抗原陰性、ヒトClass I抗原陽性であり、これらの骨芽細胞はヒト由来であることが明らかとなり、C. B-17 scidにヒト骨組織が生着することが明らかとなった。次に、C. B-17 scidにおいて、BMPによる骨形成が正常に為されるかどうかを検討するため、C. B-17 scidとその正常コントロールマウスにおけるBMPによる骨形成について比較検討した。その結果、C. B-17 scidにおけるBMPよる骨形成について、正常コントロールマウスに比較して、骨形成量および組織学的性状において、骨形成障害を示唆する所見は認められなかった。さらに、C. B-17 scidに生着したヒト骨組織において、BMP活性の検討が可能かどうかについて検討した。すなわち、C. B-17 scidにヒト骨組織を移植し、生着したヒト骨組織部にBMPを注射し、BMPによる新生骨の形成について、組織学的に検討した。その結果C. B-17 scidに生着したヒト骨組織に軟骨形成を伴った新生骨の形成が認められ、実験動物に生着したヒト骨組織においてもBMPによる骨形成の検討が可能であることが明らかとなった。以上より、今後BMPを臨床応用する際に必要な、BMP活性を促進および制御する方法の開発を実験動物に生着したヒト骨組織で検討することが可能となり、BMPの臨床応用に大きく貢献することができると思われる。
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