本研究の目的は、骨形成タンパクによる骨形成のサイトカインによる促進および制御法の検討であるが、特にBMPの臨床応用を想定した実験系の開発に主眼を置き、以下に示す4つの問題点について検討した。すなわち、1.ある種のサイトカインがBMP活性に影響を与え得るかどうか、2.ある種の実験動物にヒト骨組織が生着可能かどうか、3.ヒト骨組織が生着し得る実験動物において正常な骨形成が為されるか、および4.実験動物に生着したヒト骨組織においてBMPによる骨形成が為されるかどうかについての検討である。 第1番目の問題については、リンパ球増殖遺伝子のBMP活性への影響をみることにより、BMP活性は他のサイトカインの投与により調節し得る可能性が示唆された。第2番目の問題については、C.B-17 Scidへのヒト骨組織の移植を検討することにより、C.B-17 Scidはヒト骨組織が生着可能である実験動物であることが明らかとなった。第3番目の問題については、C.B-17 Scidとその正常コントロールマウスであるC.B-17におけるBMPによる骨形成を比較検討することにより、ヒト骨組織が生着し得るC. B-17 Scidにおいても正常な骨形成が為されることが明らかとなった。さらに、第4番目の問題については、C.B-17 Scidに生着したヒト骨組織におけるBMP活性を検討することにより、実験動物に生着したヒト骨組織においてもBMP活性の検討が可能であることが明らかとなった。 以上より、本研究の結果、BMPを臨床応用する際に必要と思われるBMP活性を促進および制御する方法の開発を実験動物に生着したヒト骨組織で検討することが可能であることが明らかとなり、本研究で開発された実験系は、今後のBMPの臨床応用に大きく貢献することができると思われる。
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